遊技機と販売会社の計12団体からなる全国遊技機組合連合会は2022年7月19日、東京ドームホテルで『スマート遊技機フォーラム』を開催した。
ホール関係者、メーカー、そして私たち媒体やメディアなど様々な業界関係者が参加した本フォーラムはリアル開催だけでなく、時代に合わせたネット同時中継も行われるということで会場後方には本格的な撮影機材が並んでいた。
イベントは「踏み出そう次のステージへ」というキャッチコピーのオープニングムービーからスタート。
スマート遊技機といえば最初に頭に浮かぶのが、パチンコ玉やメダルに触れることのない、いわゆる封入式遊技機ではないだろうか。
もちろんこれらもそのひとつだが、遊技機のスマート化は他にも業界全体へ様々な変化をもたらす。
● 確率:1/320(現行機) → 1/350(スマパチ)
スペック設計の幅が広がることで遊技機に多様性が生まれる
● C時短を利用した【新機能】:非搭載(現行機) → 搭載可(スマパチ)
今までにない出玉の波を作ることが可能になり、通常時との組み合わせで「パチスロのATなどにおけるチャンスゾーン」と同様のものがパチンコにも搭載されることになる
● コンプリート機能の搭載
出玉に上限を設け、そこに達したら遊技機が停止する仕組みだ。具体的にはパチンコはMY95000発となり上限に近づくと液晶にコンプリートカウンターが表示され、達すると液晶に停止メッセージが出る。
これは行政の指導などではなく業界の自主的なルールとなり、スマート化のテーマのひとつである「依存症対策」への布石だろう。実際にコンプリートに達する出玉にはそうそう出会えないので、体感で制限を感じることはないだろう。
● 有利区間G数:4000G(現行機) →無制限に(スマスロ)
6.5号機と同様にスマスロも有利区間の終了条件がMY2400枚から差枚数2400枚とな
り、状況次第では一撃2400枚を超える出玉獲得が可能となる。
また有利区間ゲームが6.5号機は3000Gから4000に変更されたが、スマスロでは無制限に。設計の自由度が格段に上がるため、これらは明るいニュースと言えるだろう。
● コンプリート機能の搭載
さきほど紹介したコンプリート機能はスマスロでも搭載され、こちらはMY19,000枚の上限となる。
▲スマスロでもカウンターとコンプリート達成の停止メッセージが
● 出玉データの一言管理による依存症対策効果
● 投入や箱積みなどメダルやパチンコ玉に関する行動が無くなるため稼働率が上昇する
● 省スペース化により売り場面積を増やすことなく総台数を増やせる
● パチンコ玉やメダルの管理システムもなくなるためホールの静音化や電力節約、機器の軽量化による人的コストの削減にもつながる
● 不正(ゴト行為)の一部が物理的に根絶できリソースの節約につながる
● パチンコ玉やメダルに完全非接触となり感染症予防にも貢献できる
● ランニングコストの削減
細かく説明するとキリがないので箇条書き程度に収めようと思うが今回のスマート遊技機の導入は間違い無く業界最大の変革となるだろう。
連合会はスマート化について11月からの導入を目指し、2023年3月までに10-15%の入れ替えを目指しているとした。もちろん現行機に対してのニーズも理解しているようで、「2023年にはスマート化しない」という選択も有効とのこと。
業界がもう一段階大きく変わるのは新規店舗として完全にスマート遊技機のみの「スマート店舗」が登場してからではないだろうか。
フォーラムでは新しい形態として以下のような斬新な店舗アイデアが発表された。
● コンビニ規模の数十台の「省スペース店舗」
● 商業ビルの1フロアを活用した「空中店舗」
● 入れ替えが容易になるため「繁忙期限定増台」
これ以外にもバーとの併設やスタジアム型の配置、対戦型のシステムなどあくまでアイデアだが様々なラフ画も公開され、スマート化によりホールのあり方が無限に広がる可能性を感じた。
▲斬新な店舗デザイン案
このように遊技機のスマート化は単にメダルやパチンコ玉が無くなるだけでなく業界全体へ様々な変化をもたらす。
そしてこれらの変化を必要とする背景には規制や感染症など様々な要因による遊技人口の顕著な減少があり、「若年層をメインとした新規ユーザーの獲得」「遊技から離れてしまったファンを取り戻す」という業界全体のまさしく至上命題ともいえる問題があるのだ。
「お客様を楽しませる、ファンになってもらう。そのためにできる準備は100%行ってきた」という日工組理事長榎本氏の言葉でフォーラムは締めくくられたが、果たしてスマート遊技機の導入はこれらの課題を解決し、業界の救世主となりうるのか注目である。